21世紀中国ニュース

激ジョブ到来で重たいネタをやっている暇がないのですが、ちょっと見過ごせないということで、河南省製鉄企業の紛争ネタを。集めた記事を見返している暇がないので記憶だけで書きますが、間違っていたら勘弁してください。

河南省濮陽市の林州鋼鉄社で従業員の立てこもり事件が発生、8月11日から4日間にわたりにらみ合いが続きました。武装警官が工場を包囲し一部では衝突もあったとか。

ブログ「中南海ノ黄昏」のエントリー「中国鉄鋼業界再編に伴う混乱」が事件について取り上げていますが、管見の限り日本語ネットメディアで取り上げた唯一の記事です。その労力に頭が下がるとともに、日本のマスコミは何をしているのやらと怒りがこみあげます。結構重要な事件だと思うのですが。

先月24日には吉林省の製鉄企業でも騒ぎがありましたが（28日付レコードチャイナ大手鉄鋼会社で抗議デモ、社長が殴り殺される―吉林省）、今回の事件も同じく国有企業の民営化に従業員が反対してのもの。両方とも不振の国有企業が民間企業に買収された後に事件が起きました。河南省のほうでは7月末に企業売却の入札が行われたそうですが、最低価格に入札者がなく数度にわたり最低価格が引き下げられるとの怪しげな事態になったそうです。

よく知られているとおり中国の鉄鋼生産能力の過剰は激しく深刻。しかも昨年末からの4兆元景気対策を当て込んで、また地方政府による「おらが街にも製鉄企業が欲しいんじゃ！」との叫びで新たな工場がばしばし建っている状態。昨年1年間で新たに増加した鉄鋼生産能力の80％が中国だったという絶望的な話が載っていました。

となれば業界再編は避けられないわけで、生産設備が古い国有企業が淘汰されるのは必然。しかし民間企業に買収されればリストラは避けられないでしょうし、定年者への年金、住宅（企業が支給していた場合）、福利厚生にも問題が生じます。というわけで逮捕覚悟で戦うのも理解できるところです。ただ“悪者”の民間企業の立場も切ないものではないかと推測されます。そもそも本当に国有企業を合併するメリットがあるのか、要らないのに「頼むから買ってよ」と頼まれたんじゃないのか、というのがすぐに思いつくわけで。仕方なく買ってみればぼこぼこに批判され、労働者からは暴力を振るわれる始末。客観的に見て労働者以上にかわいそうかもしれません。

さて国有企業のリストラといえば、思い出されるのが朱鎔基。日本をはじめ海外ではバリバリの実務派にして清廉な政治家と高い評価を受けているようですが、中国では嫌いな人が多い政治家です。まあこいつのせいで仕事がなくなった、年金が消えたという恨みはなかなか許せるものじゃあないでしょう。

それでも朱は国内に大きな混乱を出さずに（小さな混乱は腐るほどあったわけですが）改革をやってのけたわけですが、世界的な金融危機でえらいことになっている今、リストラしまくりの国有企業改革、再編はきわめて危険なチャレンジです。

中国政府はそんなことを百も承知だと思っていたのですが、びびったのが13日、中国工業情報化部の李毅中部長の記者会見。「生産過剰だからリストラするよー」といけしゃーしゃーと言い放っています。これ、河南省で立てこもりしている最中での発言ですよ。ソースコード強制開示、検閲ソフト・グリーンダムと今年だけで大失態を二発も繰り出した工業情報化部は伊達じゃないなと納得しました。

ともかく中国にとって最大のリスクは民生問題。その最も重要なことは雇用の問題です。超金融緩和のリバウンドも見えつつあるなか、雇用をいかに確保するかは政策のキモであると同時に最大の難点でもあるはず。李部長のようなお気楽な脳みそをしていると、これからも同様の紛争が続出することは必須でしょう。

大国となった中国の混乱は世界的な影響を与えることは必至。中国関連の仕事で口を糊している私及び友人の立場からしても、はたまた中国に物を売りつけることで今を切り抜けようとしている日本輸出企業の立場からしても、「頼むから中国官僚の“優秀”な脳みそでどうにかして！」というのが切なる願いであります。


　　　
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